USCPAに興味を持った人が、同レベルの資格として比較検討することが多いのが簿記1級です。
会計や財務経理分野にいる人、興味を持っている人からよく質問をいただくのが、
- 内容や制度の違い
- どちらの方が難しいのか
- どちらを取るべきか
というポイントです。
どちらも凄い資格と言えるけど、
勿論内容は違うので、状況によってどちらが必要か判断するべきやで
今回は、実際に勉強した経験からUSCPAと簿記1級の難易度を比較し、それぞれの資格の活かし方を説明していきます。
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内容の違い
簿記と会計士資格の内容の違いについては、まず単語そのものの意味を考えると分かりやすいと思います。「簿記」と「会計」という単語が意味する領域に分けて考えるべきだと思います。
ざっくり、「会計」というプロセスの中の1要素(手段)として「簿記」があると考えていていただけると分かりやすいと思います。
簿記とは帳簿に記録する手段
まず、簿記とは財務諸表作成のために帳簿に記録すること、その作成方法を指します。
英語にしてもらえると分かりやすいです。英語では「bookkeeping」となり、帳簿(book=お金の流れを記録する台帳)を記録(keeping)することを意味します。なので「簿記」という言葉は帳簿に記録する手段自体を指します。
会計とは財務諸表を報告するプロセス
簿記により取引を記録し作成された財務諸表を報告するプロセスが会計です。
こちらも英語で考えて頂きたく、会計とは英語で「accounting」です。これは説明・報告する意味の動詞(account)からきているので、会計とはお金や物の取引に関して報告することを指します。
また、会計の報告先は、株式会社であれば会計基準というルールに基づき株主や経営者、税務申告に関しては法人税法というルールに基づき税務署が報告先となります。
会計と簿記で試験科目が異なる
会計と簿記という単語の意味の違いが、そのまま試験科目の違いです。
簿記1級は帳簿に記録する手段に特化した内容であり、USCPAは簿記により取引を記録し作成された財務諸表を報告する会計全体のプロセスを適切に行える人材の為の試験科目です。
どちらも4科目やけど、
簿記1級は一度に全科目を受験
USCPAは1科目ずつ受験
というのが大きく違うで
簿記一級の試験科目
- 商業簿記・会計学
- 購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
- 工業簿記・原価計算
- 企業内部での部門別や製品別の材料・燃料・人力などの資源の投入を記録・計算する技能で、経営管理に必須の知識です。
USCPAの試験科目
必須科目
- FAR(Financial Accounting and Reporting):財務会計
- 簿記準1級相当と言われることが多い企業会計の分野です。
- AUD(Auditing and Attestation):監査及び証明業務
- 内容は監査及び証明業務であり、会計士の独占業務である監査業務を体系的に学ぶ科目です。
- REG(Taxation and Regulation):税法及び商法
- 内容は、連邦税法、ビジネス法と職業倫理で構成されています。
選択科目
今までBECという科目でしたが、2024年1月から試験制度が変更され、以下3科目から1科目を選択することになります。
- BAR(Business Analysis and Reporting):ビジネス分析及び報告
- ISC(Information Systems and Controls):情報システム及び統制
- TCP(Tax Compliance and Planning):税法遵守及び税務計画
難易度の比較
続いて難易度なんですが、上述の通りUSCPAの方が範囲が広い為資格取得の難易度は高いですが、簿記1級の方が問題自体の難易度は高いと考えてください。
簿記1級は簿記についての深い理解が必要なので、面白いですがめちゃくちゃ難しいです。USCPAは科目が多いので、苦手科目を作れないし、全科目通すと相当時間を要することになります。
あと、
USCPAは人によっては英語のハードルも大きいの忘れたらあかん
USCPAのFAR(BAR)より簿記1級の方が内容が難しい
会計と簿記の違いも上述していますが、内容としてはUSCPAのFAR(財務会計)は簿記と通ずる内容となっています。
一概に違う試験の難易度を比較することは難しいですが、一般的には簿記2級<FAR<簿記1級の順番で難しいといわれており、難易度としてはFARは簿記1.5級程度と考えてください。
同じ論点に対して簿記1級の方がより深い理解が必要
どのように簿記1級の方が難しいかというと、実際に同じ論点でも簿記1級の方がより深掘って理解する必要がある点だと思います。
具体的な論点毎の違いを2つ挙げます。
連結会計の内容としては主に資本連結、成果連結といった内容になりますがUSCPA(FAR)と簿記1級では対象範囲が異なります。簿記1級だと全仕訳起票できること、タイム・テーブルで親会社持ち分や非支配株主持分を計算できるかどうか問われるので非常に難易度が高いです。
- USCPA
- 資本連結:基本的な内容として段階取得やのれんの計算等がわかっていれば問題無、追加取得や一部売却といった論点もあるはありますが重要性低いです。
- 成果連結:グループ間の商品売買や有形固定資産売買の基本的な流れがわかっていれば問題無し。
- 簿記1級
- 資本連結:追加取得や一部売却を始めとして、そ評(その他有価証券差額金)の取扱等非常にややこしい論点があって、タイム・テーブルで親会社持ち分や非支配株主持分を計算できるかどうか問われます。
- 成果連結:グループ間の商品売買においても期首時点の未実現利益の消去や実現、貸し倒れ引当金や非償却性資産(土地)の論点もあります。
簿記1級の場合、
さらには、連結税効果とか外貨建の連結とかの関連論点もあってほんま手に負えんで、、、
原価計算の内容は、一応範囲が被っているのですが難易度が全く違います。USCPAでは大枠の考え方を理解していれば良いですが、簿記1級では計算方法に応じてボックス図やシュラッター図を用いてかなり複雑な計算ができることが求められます。
- USCPA
- 原価計算方法の種類、基本的な考え方、総合原価計算で加重平均や先入先出法の計算ができれば問題無し
- 簿記1級
- 原価計算方法も種類がかなり多いです。総合原価計算の中でも工程別、組別、等級別原価計算に分かれており、さらには直接原価計算や標準原価計算等があります。
- また、様々な計算方法の中で、仕損費用(不良品)をどう処理するか、完成品のみに負担させるか月末仕掛品に負担させるか、どのように計算させるかがかなり複雑です。
原価計算って製造業などで商品やサービスの製造原価の計算とか関わっている人じゃないと馴染みないしね、、、
勉強時間はUSCPAの方が長い
上述の通りUSCPAは科目が多く暗記科目も多いので、全科目通すと相当時間を要することになります。1,200時間〜1,500時間ほどかかると考えるべきかと思います。
簿記1級も2級の知識がある前提で勉強時間としては最低500時間~700時間必要となります。
簿記の合格率と難易度・勉強時間は?くわしく解説します!:https://www.tac-school.co.jp/kouza_boki/boki_exam_overview_and_difficulty.html
制度面での難易度はUSCPAの方が易しい
USCPAは受験資格をクリアする点が非常に面倒ですが、不可能なボリュームではない試験であり、1科目ずつ集中して勉強を進めていき、自身のタイミングで受験出来るため本業に支障がないスケジューリングが可能なため、制度面ではUSCPAの方が最終合格まで到達しやすいと思います。
受験資格
まず簿記1級は受験資格は特に無です。
USCPAは受験資格があり、学位要件と単位要件の両方をクリアしていることで受験可能となります。概ね2つの要件で受験資格を定めていますが、各州毎に細かい内容を規定しているので必ず確認必要です。
単位取得は相当面倒くさいです、、
USCPA試験は受験前にこちらにまとめている受験資格:学位要件×単位要件を満たす必要があります。単位要件とは、会計単位とビジネス単位を一定数以上取得して満たされる要件です。全ての会計単位やビジネス単位が満たせている人は少ないです。その為、人に依りますが4,5回〜の単位取得の為の試験が必要です。このテストは別に難易度は高く無いのですが、中々手間がかかるのでここのサポートの手厚さも予備校を選ぶ重要なポイントです。
USCPAの受験資格って難しくはないけど、
ややこしくて面倒って感じです、、、
制度
簿記1級の方は4科目を同時に受験する形の一発勝負で年2回のチャンスがあります。
対してUSCPAは1科目毎に受験可能で自身のタイミングで受験可能であることから非常にスケジューリングしやすい資格と言えます。
簿記1級とかUSCPAくらいの難易度になると、
社会人受験生にとってはスケジューリングしやすいかどうかがめっちゃ大事やで
USCPAと日本の公認会計士・簿記の違いまとめ
USCPA、簿記、日本の公認会計士の違いをまとめています。
USCPAの難易度については、専念して2年以上必要と言われる日本の公認会計士と比較すると簡単と言っていいと思います。同じ会計士試験なので内容の構成は似ていますが、難易度・ボリューム共に大きな差があります。
また、2,3ヶ月〜片手間に勉強して取得する人が多い簿記2級と比較すると難しいです。ただ昨今の簿記2級も難易度が上がっており内容の難易度が大きく上がる、というよりは簿記(財務会計)以外にも3科目あり苦手論点を無くす必要があること、長い時間が必然的にかかってくることで資格取得の難易度が高い、というイメージかと思います。
USCPA | 公認会計士(日本) | 簿記1級 | 簿記2級 | |
---|---|---|---|---|
言語 | 英語 | 日本語 | 日本語 | 日本語 |
受験日 | いつでも何度でも自身のスケジュールで受験可能 | 論文:年1回 | 短答式:年2回年2回 | 年3回 |
受験資格 | ・単位要件 (参考) | ・学位要件無 | 無 | 無 |
範囲 | ・財務会計 ・監査論 ・税法及び商法 (+選択科目) | 短答式(企業法、管理会計論、監査論、財務会計論) 論文式(会計学、監査論、企業法、租税法+選択科目) | ・商業簿記 ・会計学 ・工業簿記 ・原価計算 | ・商業簿記 ・工業簿記(原価計算含む) |
勉強時間 | 1,200時間〜1,500時間 | 3,000時間〜 | 500時間〜700時間 | 250時間〜350時間 |
オススメな人 | ・監査を経験したい人 ・アドバイザリーや事業会社側(さらには海外)の会計に関してキャリアを広げていきたい人 | ・日本国内において独立開業をしたい人 | ・財務経理分野での専門家としてキャリアを築いていきたい人 | ・簿記・経理についての基礎知識をつけたい人 ・若手で財務経理分野への転職や社内でのキャリアチェンジをしたい人 |
説明会・資料請求 | 米国公認会計士ならアビタス。 (パンフレット・セミナー無料) | 資格の学校TAC<簿記検定>各種コース開講 |
どんな人向けの資格か
どういった職種かによって簿記1級かUSCPAのどちらがオススメか変わってきます。
財務経理分野での専門家としてキャリアを築いていきたい人には簿記1級がオススメですし、より幅広く領域を広げていきたい、転職に活用したい人にはUSCPAがオススメです。
簿記1級は財務経理の専門家が取得する資格
上述した通り、基本的には「会計」というプロセスの中の1要素(手段)としての簿記の資格ですが、簿記1級になると科目の中に「会計学」もあり、簿記を超えた企業会計に関する法律・規則、企業の経営管理や経営分析も含む内容となります。
簿記1級のレベル感としては、日本商工会議所によると次のように定義されています。
極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。
日本商工会議所「簿記1級のレベル」:https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class1
合格すると税理士試験の受験資格が得られる。公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。
簿記2級に関しては必ずしも財務経理部門の方じゃなくても取得している人は多いですよね、ただ簿記1級の難易度や必要な勉強時間も考えると簿記1級まで取得する人は基本的には財務経理系の職種の人かと思います。
- 財務経理分野での専門家としてキャリアを築いていきたい人
ただここで重要なのが、
簿記1級レベルになるとかなり専門的で大手企業じゃないとオーバースペックと見なされる可能性があること
また、基本的には経理は資格より実務経験が優先されること
幅広くキャリアを広げたい人はUSCAPがオススメ
日系事業会社の財務経理でやっていく人に関しては簿記1級といった選択肢も有かと思いますが、より幅広く会計に関するキャリアを広げて行きたい人はUSCAPがオススメです。
そもそも試験が英語という難しいポイントがありますが、取得後にキャリアが広がる可能性を考えるとUSCPAはとてもコスパの良い資格であると言えます。
- 監査法人の監査職
- 監査法人の会計アドバイザリー
- 会計コンサルやFAS(Financial Advisory Service)
- 外資系企業のAccounting、FP&A
- 海外子会社を持つグローバルな日本企業の財務経理
監査法人に就職・転職できる
USCPAに関しては、特にこのメリットが一番大きいと思います。
実際に日本の公認会計士が圧倒的多数が最初に就職するのは監査法人であり、一般的にやっぱり「会計士」という職業に対して世間がイメージする職業は「監査」なんですよね。
USCPA取得後に会計業界に入っていく人にとって、若い内に監査をする側に立ち、プロとしての知識や考え方を身につけることは一生の財産になると思います。BIG4等は研修制度も充実していますし、非常にハイレベルな日本の公認会計士の方と同様のレベルを求められるので、ハードな環境かと思いますが、会計士としての土台のスキルを作ることが出来ます。
大きく分けて、監査法人には監査職とアドバイザリー職の2つがあります。
現在、BIG4の監査法人の監査部門やアドバイザリー部門では、人手不足等の背景もありUSCPA有資格者の採用も積極的です。どちらもクライアントである企業がどんどんグローバルに展開しており、USCPAをアピールすることが十分可能です。
まとめ
以上、まとめてきたように、どんな職種によってどちらの資格の方が適しているか変わってきます。
USCPAは監査法人や海外含めた大手企業の様々な部門で役立つと思います。簿記1級は基本的に経理業種への就職・転職の可能性が高まると考えられます。
状況に合わせてどちらが適しているか考えて挑戦しましょう。
あと、
言っちゃうと2つとも取るのもめっちゃオススメやで
この二つとも資格取得することで、連結含めた経理の領域や税務や管理会計分野を網羅的・体系的にカバーできると思いますので非常に役立つと思います。
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